障害を理由に諦めない。自分の気持ちに正直に生きる方法

Interviewer Yuki
生まれつき脳性麻痺の障害があるゆうすけさん。日常生活では主に電動車椅子を使っています。障がいのためにやりたいことを諦めるのではなく、 “自分がやりたいかどうか”という気持ちを大切に、仕事やプライベートでチャレンジを続けています。時には挫折を経験しながらも、自分の気持ちに正直に生きるために、ゆうすけさんが心がけている具体的な行動を伺いました。(2020年7月15日取材)

−【Yuki】 まずは、今どんなお仕事をしているか教えてください。

−【ゆうすけさん】はい。今はトレーニングジムで事務の仕事をしていて、平日週5日、午前10時〜午後6時まで働いています。仕事の内容は、ジムに通われる個人のお客様との契約書をデータ化したり、取引先となる企業様について調べる業務などを担当しています。

僕はスポーツが好きなので、楽しく働けそうだなと思って、今の会社に応募しました。そのまま働き続けて今年で5年目になります。後輩の教育係も任せてもらっていて、自分が教えた子たちの成長を感じられたときに特にやりがいを感じます。

– 好きなことに関連するお仕事、楽しそうですね。どうやって仕事を探したのですか?

-基本的にはハローワークへ行き、障害者枠の求人で、かつ車椅子での勤務も問題ないと言っているところを中心に探しました。

また、始めから自分にできること、できないことを明確にした上で、条件を絞って仕事を探し、あとは面接の時にきちんと自分の事情を説明しました。もしそこで不採用になっても、ご縁がなかったのかなと思って、次にチャレンジしていきましたね。

– 応募するときに自分の障害についてどのように説明しましたか?

-僕からは、障がいの特性上どんなことができてどんなことが苦手なのかを説明しました。例えば僕の場合、左手に麻痺があるので、書類のファイリングや重いものを持つ、ハサミを使うといった両手を使う作業が苦手だということを具体的に伝えましたね。

会社側からは、もし採用されたら担当業務の他にどんな仕事に挑戦したみたいか?といったことや、休日の過ごし方などの人間性について聞かれることが多かったです。

– 採用後はスムーズに働き始めることができましたか?

-うちの会社は障害がある職員が働きやすい環境となるようサポートしてくれる企業さまと契約しています。普段は別のフロアに常駐しているのですが、もし仕事上不安なことがあっても、そこに相談すれば、担当者から会社に話をしてくれるんです。

– そんなサービスがあるんですね。サービスを利用して実際働きやすさは感じますか?

-僕も今の会社に入るときに初めて知ったんです。何かあったときに、上司に直接相談しにくいこともありますが、間に入って相談してくれるので働きやすさは実感しています。

– 働き始めたら実は社内設備はバリアフリーではなかった、というようなケースを耳にすることがありますが、その点、不安はありませんでしたか?

-会社が出す求人の募集要項の中に車椅子用のお手洗いがあると記載されていましたが、実際採用が決まったときに、契約している企業さまが事前に社内設備を確認してくれるんです。例えば実際の仕事場から車椅子用トイレまでの動線のチェックをしたりしてくれていたので、入社してから困ることはありませんでした。

僕自身も、会社の設備は自分が働く上で問題がないか、面接を受けに行く時点で必ず自分でも確認していました。例えば入り口に段差がないかとか、目で見える範囲のことはチェックするようにしていました。

-働く環境はとても整っているんですね。実際に仕事をする上で工夫していることはありますか?

-できることとできないことを自分の中で明確にすることはとても大事だと思っています。できないことは事前に上司に伝え、できない中でもどうしてもやってみたい業務については、僕が担当するとやり遂げるまでにおおよそこれくらいの時間がかかりますが、いいですか?という了承を取ります。やりたいだけで仕事を引き受けて、結局できなかったら迷惑をかけてしまいますからね。

さらに、その業務を進めるうえで周りの人より少し早めに出勤して仕事を始め、最後は同僚と同じ時間に終わるよう、仕事にかかる時間配分を自分で考えて進めています。

– 仕事をする上でゆうすけさんなりに工夫しているんですね。仕事にかかる時間を上司に伝えて進めるのは、とてもいい方法ですね。
障害を持っていることで、職場で我慢する場面や悔しい思いをする時もあるかもしれません。そんな時はどうしていますか?

会社で働いていると障害の有無に関係なく、やっぱり色々あると思います。上司だから言えないとかあると思いますが、最低限自分の中のここは譲れないというところだけは曲げないようにしています。上司だと立てないといけない時もあると思うんですよ。だけど言うところはちゃんと言わないと、自分の思いは伝わらない。まず伝えてみてダメだったら言葉を変えてもう一度伝えてみることが大事だと思います。そのためには自分が何を大事にしたいか?の基準を日頃からきちんと明確にしていることが大事だと思います。

“できないことをできるようにするには、どうすればいいか?”

−【Yuki】仕事選びの段階から実際に仕事を進める上でも、自分の気持ちを大事にされているんですね。
では、そんなゆうすけさんの子ども時代、どのように過ごしたのかを教えてください。

−【ゆうすけさん】小さい頃から、障害があることは事実として受け入れていたので、 “どうして自分はこうなんだろう”と自分を責めるようなことや悲観することはあまりなかったです。

ただ、“できないことをできるようにするには、どうすればいいか?”を、いつも考えていました例えば友達と遊ぶときに、周りの子と同じやり方ではできなくても、少し工夫することで最終的に皆と楽しめればいいかなと。

当時はPCウォーカーという歩行器を主に使って生活していたのですが、休み時間や放課後はいつも友達と体育館でボール遊びや鬼ごっこ等をして遊んでいました。けっこう活発な子どもでしたね。特に小学校高学年から中学生時代はバスケ部に所属していたのもあって、常に走り回っていましたよ。

歩行器で走り回るとボールが歩行器にぶつかってしまうので、その場で静止したままドリブルをしたり、仲間にパスを回したり。立ち止まってできるプレーをしていました。これも、少しの工夫で友達と楽しめたいい経験です。

車椅子バスケットとの出会いで海外にも挑戦

高校では初めて特別支援学校に入学しました。本当は地元の普通学校に行きたかったんですが、バスケばっかりやっていたら受験に失敗して(笑)

そこにはバスケ部はなかったものの、車椅子バスケに出会い、地元の車いすバスケのチームに所属していました。ポジションはガードで、少しだけ試合にも出させていただいたりして。当時地元で国体があり、県にチームが1つしかなかったので、自動的に国体に出ることができるという貴重な経験もしました。

また、当時は英語も好きで海外に行ってみたい気持ちがあり、高校3年生の時にハワイの障害者と交流したり、バリアフリーについて学ぶ研修に参加しました。そこでの1週間は想像以上に刺激的で。もっと英語や海外のことを学びたいと思い、高校卒業後は個人研修にも応募しました。

研修に参加するためには書類審査や英語での面接などを通過しなければいけなかったので、英会話に通って面接の練習もしました。研修では、海外で盛んだったプロの車椅子バスケについて学びたいと思っていて、自分で車椅子バスケをやりながら、海外のプロチームと日本との違いを学び、それを日本にも紹介したかったんです。結局合格は叶わなかったのですが、すごくいい経験でした。

−【Yuki】バスケットに海外研修。色々なことにチャレンジされてきたんですね。その後もバスケは続けているんですか?

−【ゆうすけさん】はい。社会人になってからもバスケは好きで、休日はプロの試合をよく見に行きます。地元チームを応援していて、開幕戦を一人で見に行ったり、試合がある週末には他の予定を入れずに観戦を楽しんでいます。

バスケ以外に、最近始めたDegital audio workstationという、パソコンでの曲作りにもはまっていて。実は以前、少しだけバンド活動もやっていて、ボーカルとハーモニカを担当していました。ライブも2、3回やったりして、楽しい思い出ですね。

障害があるから諦めるのではなく、まずはやってみる

 

−【Yuki】プライベートも充実されているゆうすけさんですが、やりたいことを実現するためにやってよかったことは?

−【ゆうすけさん】とりあえずなんでもやってみることが大事かなと。自分には障害があるからこれはできないとか、叶うか叶わないかは考えず、やりたいと思うならまずはやってみる。行動することで、結果どうだったか?自分はどう感じたか?実行するうえで難しいことは何か?ということが見えて、次にどう行動すればいいかがわかるんです。

行動する中でもし自分には難しいことがあったら、人にお願いすることもあります。昔はお願いすること=恥ずかしいことと思っていたから、うまく人に頼めなかったんです。でも人にお願いするという経験の場数を踏んで慣れたことで、最近は、誰かに頼んでその人がやってくれるのなら、それでいいんじゃないかなと思えるようになりました。

−【Yuki】今後の目標や、この先実現させたいことありますか?

−【ゆうすけさん】今、奥さんと二人で起業の準備をしています。ただ、あまり利益を求めようとかお金持ちになりたいとかは思ってはいなくて。自分たちがやっていて楽しく続けられるのが一番いいと思っています。僕たちが楽しくやっていたら周りに同じような輪ができてくると思うんです。見返りは求めずに、皆が集まれる場所を作って、皆で楽しめる場所や時間を作っていければいいですね。

– 最後に、このサイトを見てくれている方々に向けて一言お願いします。

このサイトを見てくれている人の中にはきっとまだ若い人も多いと思います。これから未来を切り開いていけるから、とりあえず興味があることはなんでもいいから動いてみるのがいいと思います。そこでつまずくことは誰にでもあるし、つまずいたらダメってことでもない。たとえつまずいても話を聞いてくれる人が周りに絶対います。友達とか親とか。そんな人たちに話を聞いてもらうだけでも悩みって意外と消えてしまうもの。だから一度立ち止まって誰かに話してみて。

あとは話を聞いてくれた人がアドバイスをくれたとしても、それは必ずしも絶対ではない。そんな考え方もあるんだなって思って、自分でいいと思ったアドバイスをもとに次のステップに進むのがいいと思います。だから怖がらずにどんなに小さなことでも、興味のあることがあれば挑戦してみてほしいと思います。

 

−【Yuki】インタビューを終えて
障害があると、自分の気持ちより、“自分にできるか?”を優先しがちだと思うのですが、ゆうすけさんは仕事もプライベートも自分がどう感じるか?やっていて楽しいか?という気持ちを大切に行動する姿がとても素敵です。”できないことをできるようにするためには、どうすればいいか?”こう問い続けることで、たくさんの道が開けるのではないでしょうか。ゆうすけさん、ありがとうございました!
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